Pythonはなぜ遅いのか?高速化への挑戦とその技術的課題とは

 


Pythonのユーザーを苛立たせたいなら、こう言ってみてください:「Pythonは遅い」。​実際、これは多くの場面で真実です。​CやC++、Java、Rust、Goなどと比べて、外部のCライブラリを使用しない「純粋な」Pythonは、計算やオブジェクト操作の速度で劣ります。​

Pythonの速度向上が難しい理由

Pythonのパフォーマンスの問題は、インタプリタ言語であることよりも、その「動的性」に起因します。​C++やRustのような言語では、変数に型が明確に割り当てられ、コンパイラが最適化を行いやすいです。​しかし、Pythonでは変数にどんな型の値でも代入できるため、実行時に型を確認しなければならず、多くの最適化が困難になります。​

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型ヒントでは解決できない理由

最近追加された型ヒント機能は、主にコードの静的解析を目的としており、実行時のパフォーマンス向上には寄与しません。​Cythonのようなツールは、型情報を利用してコードをCに変換し、速度を向上させることができますが、Pythonのオブジェクト型(リストや辞書など)を使用すると、CPythonのランタイムに戻る必要があり、パフォーマンスの利点が失われます。​

Pythonの内部からの最適化

CPythonの最近のバージョンでは、いくつかの最適化提案が導入されています。​例えば、特定のコード領域でオブジェクトの型が安定している場合、一般的なバイトコードを型に特化したものに置き換える「適応型インタプリタ」があります。​これにより、型の確認や参照の回数を減らし、パフォーマンスを向上させることができます。​

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また、PyPyのような代替実装は、JIT(Just-In-Time)コンパイルを使用してPythonの速度を向上させています。​CPythonでもJITの導入が検討されていますが、現時点では大きな成果は得られていません。​さらに、GIL(Global Interpreter Lock)を排除したバージョンのCPythonも開発中で、マルチスレッドのパフォーマンス向上が期待されています。​

Python自体を改善する意義

Mojoのような新しい言語は、Pythonに似た構文を持ち、機械語へのコンパイルによって高いパフォーマンスを実現しています。​しかし、Pythonの既存のエコシステムとの完全な互換性を持つことは難しく、広範な受け入れを得るのは容易ではありません。​そのため、Python自体を改善し、既存のコミュニティと共に進化させることが最も現実的なアプローチです。​

Pythonの速度向上は一朝一夕には実現しませんが、インタプリタの最適化やGILの排除など、着実な進歩が見られます。​これらの取り組みにより、Pythonは今後も多くのユーザーにとって魅力的な選択肢であり続けるでしょう。​


出典: InfoWorld - Making Python faster won't be easy, but it'll be worth it

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