Rustは人間には難しい。でもAIには最高の教材だった
ここ10年、ソフトウェア業界の“暗黙のルール”はとてもシンプルでした。 「先にリリースした者が勝つ」。 新規プロジェクトで言語選定をする時、多くの企業は Python か TypeScript を選んできました。理由は単純です。エコシステムが巨大で、人材を集めやすく、コンポーネントを組み合わせれば、金曜には上司にデモを見せられる。 一方で、Rust や Go、C++ は性能面では Python を10倍、100倍上回ることもあります。しかし代償は重い。学習コストは高く、エンジニア採用も難しく、開発環境はすぐエラーを吐く。 だから皆、心の中では分かっていながら Python を選びました。 「性能最適化は後でやります」 実際には、その“後で”が来ることはほとんどありませんでした。 しかし今、その常識が崩れ始めています。 理由は LLM、大規模言語モデルです。 これまで「難しすぎる」「学習コストが高い」と敬遠されていたハードコアな言語を、AI が普通に書けるようになったからです。 複雑な言語を書く難易度を AI が吸収してくれるなら、なぜ私たちは低性能な言語に妥協し続ける必要があるのでしょうか。 人間には難しい言語ほど、AI は得意になる 2年前、GPT-4 に Rust を書かせると、存在しないライブラリ名を平然と生成していました。 しかし2026年現在、Claude、GPT-5.5、DeepSeek といったモデルは、もはや“コード生成AI”ではなく、ほぼ熟練エンジニアです。SWE-bench のような高難度ベンチマークでも、上級エンジニア級の性能を見せ始めています。 現在の AI は単純なロジックだけでなく、並列処理、競合状態、アーキテクチャ最適化のような低レイヤー領域にも強くなっています。 なぜ AI は Rust を好むのか。 先月、X の技術系ブロガー CtrlAltDwayne は、こんな言葉を投稿しました。 「2026年に Rust を選ぶ理由は、性能でもメモリ安全性でもない。AI が C++ より Rust を圧倒的に上手く書けるからだ。」 一見すると逆説的ですが、理屈はかなり筋が通っています。 Rust のコンパイラは、まるで厳格なチューターのように振る舞います。 そして、そのエラーメッセージは AI にとって極めて価値の高い“リアルタイ...